今回は短歌賞の受賞記録をもとに短歌結社のランキングを作成してみました。いったいどの結社の歌人が短歌界の賞を多く受賞しているのでしょうか?
なお、最新のランキングは「受賞数で測る短歌結社ランキング【2020年版】」になりますので、合わせてご覧ください。
この記事の目的(結社選びの材料に)
短歌賞の受賞記録から受賞者の所属結社を集計し、各短歌結社の所属歌人がどれだけ歌壇で活躍しているかのランキングを作成しました。このランキングをもって結社選びの一つの材料とされることを目的とします。
結社を選ぶポイントとしては、主義やスタイルの違い、師弟関係の強さなど様々ですが、特に気になるのは、入会した場合自分をどれだけ成長させてくれるだろうか?という点ではないでしょうか。結社への所属を意識する場合、その多くが自身の成長を期してのことが多いと思われるからです。
主宰や選者が、文化勲章や迢空賞などの大きな賞を受賞し、新人が角川短歌賞や短歌研究新人賞のような有名な賞を毎年のように取っている。そんな結社ならきっと学ぶことは多いだろうし、なんだか育て方が上手そうな気がします。
当然ながら本当の結社の実力というものを測ることはできませんが、なんとなくの活気やサポート体制をうかがい知ることができるかもしれません。
ランキングの作成
- 短歌界に関する賞における受賞者の所属結社について集計しました。
- 短歌賞だけでなく過去に歌人や歌集の受賞履歴のある文化芸術賞も対象としています。
- 集計期間は2019年から2015年までの過去5年間の受賞記録です。
- ベテランを対象とした賞も新人賞もすべて同じ評価点を与えています。
- 1件の受賞があれば10点を基本点を与えています。
- 受賞の時期が1年古くなるごとに2点減点しています。
その他
メインのランキングの後に以下の参考情報を提供します。
- 各年度の受賞数一覧表
- 各年度の受賞状況の詳細記事
- この記事の注意点
- 対象とした短歌賞および文化芸術賞
短歌結社ランキング2019
- GP(Grand Prix:大賞)は主に中堅以上のベテランを対象とした賞を意味します。
- NF(New Face:新人賞)は公募新人賞や第一歌集賞などの賞を意味します。
- 結社名は社名または歌誌名の広く通じる方を採用しています。
順位 | グループ | 得点 | GP | NF | 受賞数 | GP | NF |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 心の花 | 140 | 110 | 30 | 21 | 16 | 5 |
– | 無所属 | 86 | 26 | 60 | 12 | 4 | 8 |
2 | 未来 | 76 | 40 | 36 | 16 | 8 | 8 |
3 | かりん | 74 | 64 | 10 | 11 | 10 | 1 |
4 | 塔 | 70 | 52 | 18 | 12 | 9 | 3 |
5 | コスモス | 58 | 58 | 0 | 9 | 9 | 0 |
6 | まひる野 | 44 | 30 | 14 | 8 | 6 | 2 |
7 | 水甕 | 42 | 32 | 10 | 5 | 4 | 1 |
8 | かばん | 40 | 18 | 22 | 5 | 2 | 3 |
9 | 南の会 | 24 | 18 | 6 | 5 | 4 | 1 |
10 | 月光の会 | 20 | 0 | 20 | 3 | 0 | 3 |
心の花(竹柏会)所属の歌人が圧倒的に活躍しているとの結果となりました。
その得点は2位の未来短歌会や3位のかりんのおよそ2倍にも及びます。また一方で受賞数の差はより近いことから、得点効率が高く最近の活躍であることが分かります。他社と比較して増々の活躍を見せた上り調子の5年間であったといえるでしょう。
2位の未来短歌会は新人賞の受賞数、得点ともに最多であり、新人育成に特に強い結社とみなすこともできそうです。
5位に位置付けたコスモス短歌会ですが、新人賞相当の受賞者を出していないところが気になるところです。
8位のかばんは新人賞点が高く大賞点が低いあたり、出入りが多いのかもしれません。なんとなくらしさを感じてしまいます。
参考情報
各年度の受賞数一覧表
下記表中の見出しの数字は年度を、接尾辞Gは「Grand Prix(大賞級)」を、Nは「New Face(新人賞級)」を表します。例えば「’19G」は「2019年度の大賞級の受賞数」を表します。
順位 | グループ | ’19G | ’19N | ’18G | ’18N | ’17G | ’17N | ’16G | ’16N | ’15G | ’15N |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 心の花 | 5 | 0 | 3 | 2 | 4 | 1 | 2 | 2 | 2 | 0 |
– | 無所属 | 0 | 3 | 1 | 2 | 3 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 |
2 | 未来 | 0 | 0 | 2 | 3 | 0 | 0 | 6 | 1 | 0 | 4 |
3 | かりん | 4 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 |
4 | 塔 | 2 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 | 2 | 2 | 2 | 0 |
5 | コスモス | 3 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 |
6 | まひる野 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 | 2 | 1 | 1 | 0 |
7 | 水甕 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
8 | かばん | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
9 | 南の会 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 1 | 0 |
10 | 月光の会 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
各年度の受賞状況の詳細記事
この記事の注意点
- 結社で育ちながら受賞時には離れているなど、必ずしも各賞の結果と結社の取り組みがイコールにはなりません。
- 各賞の結果がもたらすものは、それに沿う美意識を育むものであり素晴らしいものですが、賞に見いだされなかった美意識や才能を否定するものではありません。
対象とした短歌賞および文化芸術賞
大賞(GP:Grand Prix)クラスに分類した各賞
- 文化勲章
- 文化功労者
- 紫綬褒章
- 日本芸術院会員
- 芸術選奨文部科学大臣賞
- 芸術選奨文部科学大臣賞新人賞
- 朝日賞
- 毎日芸術賞
- 読売文学賞
- 迢空賞
- 現代短歌大賞
- 詩歌文学館賞 短歌部門
- 齋藤茂吉短歌文学賞
- 若山牧水賞
- 日本歌人クラブ大賞
- 日本歌人クラブ賞
- 小野市詩歌文学賞
- 紫式部文学賞
- 前川佐美雄賞
- 塚本邦雄賞
- 寺山修司短歌賞
- 葛原妙子賞
- 短歌研究賞
- 佐藤佐太郎短歌賞
- 日本一行詩大賞
- ながらみ書房出版賞
- 現代短歌評論賞
- 日本歌人クラブ評論賞
新人賞(NF:New Face)クラスに分類した各賞
- 現代歌人協会賞
- 日本歌人クラブ新人賞
- 現代歌人集会賞
- 日本一行詩大賞新人賞
- 現代短歌新人賞
- 角川短歌賞
- 短歌研究新人賞
- 歌壇賞
- 現代短歌社賞
- 笹井宏之賞
- 中城ふみ子賞