この記事は、2020年に発表された歌壇の主要な賞および短歌界にも関係する重要な文化芸術の賞について、その結果を一覧としてまとめています。
対象とするものは、2020年1月1日から2020年12月31日に主催者や報道機関から正式に発表があったものとなります。
なお、本年2021年の最新の受賞記録は「2021年における短歌界の各賞の受賞結果」のページをご覧ください。
まだ7月で、2020年は終わってもいなくて気が早い感じもしますが、上半期を振り返ったり、今後の発表スケジュールの確認、定期的な情報確認などにも便利かなと考えています。情報が得られ次第随時更新していきます。
いずれ今年が終わりを過ぎたときに、誰かとともに2020年を振り返り、その動きを評価し、今後の展望を占うなど、さまざまな議論の資料として役立つことを願って。
12月21日の現代短歌新人賞の発表を持って、主要な賞の結果は出そろいました。
2020年を振り返り、今年の評価や来年の展望を占うなど、さまざまな議論の資料としてお使いください。
2020年の各賞受賞結果一覧
- 表中「選出なし」とあるのは「歌壇からの選出がなかった」ことを意味するものであり、その賞自体に受賞者がいなかったことを意味するものではありません。
- 「作品・対象」の『』(二重カギ括弧)は歌集など本のタイトルを、「」(カギ括弧)は書中の連作タイトルなどを意味します。
発表 | 賞 | 受賞者 | 作品・対象 | 所属 |
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1/1 | 2019年度 朝日賞 | ― | 歌壇より選出なし | ― |
1/1 | 第61回 毎日芸術賞 | ― | 歌壇より選出なし | ― |
2/1 | 第71回 読売文学賞 詩歌俳句賞 | 川野 里子 | 『歓待』 | かりん. |
3/4 | 第70回 芸術選奨文部科学大臣賞 | 吉川 宏志 | 『石蓮花』 | 塔. |
3/4 | 第70回 芸術選奨文部科学大臣新人賞 | ― | 歌壇より選出なし | ― |
3/11 | 第35回 詩歌文学館賞 短歌部門 | 花山 多佳子 | 『鳥影』 | 塔. |
3/13 | 第31回 斎藤茂吉短歌文学賞 | 吉川 宏志 | 『石蓮花』 | 塔. |
4/14 | 第18回 前川佐美雄賞 | 藤島 秀憲 | 『ミステリー』 | 心の花. |
〃 | 第28回 ながらみ書房出版賞 | 田中 薫 | 『土星蝕』 | 心の花. |
4/15 | 第54回 迢空賞 | 三枝 昴之 | 『遅速あり』 | りとむ. |
4/15 | 第12回 小野市詩歌文学賞 | 大口 玲子 | 『ザベリオ』 | 心の花. |
4/28 | 第11回 日本歌人クラブ大賞 | ― | 該当なし | ― |
〃 | 第47回 日本歌人クラブ賞 | 久々湊 盈子 | 『麻裳よし』 | 合歓. |
〃 | 第26回 日本歌人クラブ新人賞 | 門脇 篤史 | 『微風域』 | 未来, too late. |
〃 | 第18回 日本歌人クラブ評論賞 | ― | 該当なし | ― |
6/9 | 第64回 現代歌人協会賞 | 佐佐木 定綱 | 『月を食う』 | 心の花. |
〃 | 〃 | 川島 結佳子 | 『感傷ストーブ』 | かりん. |
6/26 | 第9回 中城ふみ子賞 | ― | 延期 | ― |
7/1 | 第56回 短歌研究賞 | 島田 修三 | 「いいなあ長嶋」28首(短歌研究8月号) | まひる野. |
7/7 | 第63回 短歌研究新人賞 | 平出 奔 | 「Victim」30首(短歌研究9月号) | 塔, のど笛, えいしょ. |
7/30 | 第1回 塚本邦雄賞 | 石川美南 | 『体内飛行』 | pool, sai. |
8/6 | 第30回 紫式部文学賞 | ― | 歌壇より選出なし | ― |
8/28 | 第66回 角川短歌賞 | 田中翠香 | 「光射す海」50首 (角川短歌11月号) | 未来, あひる歌会. |
〃 | 〃 | 道券はな | 「嵌めてください」50首 (角川短歌11月号) | 未来, too late, あっぱれ!. |
9/8 | 第1回 BR賞 | ― | 該当なし | ― |
8/31 | 第38回 現代短歌評論賞 | 弘平谷隆太郎 | 「歌人という主体の不可能な起源」(短歌研究10月号) | 無所属. |
9/4 | 第13回 日本一行詩大賞新人賞 | 門脇篤史 | 『微風域』 | 未来, too late. |
10/6 | 第13回 日本一行詩大賞 | ― | 歌壇より選出なし | ― |
10/15 | 第7回 佐藤佐太郎短歌賞 | 齋藤芳生 | 『花の渦』 | かりん, ロクロクの会. |
〃 | 第8回 現代短歌社賞 | 西藤定 | 「蓮池譜」300首(現代短歌21年1月号) | 未来. |
10/22 | 第25回 若山牧水賞 | 谷岡亜紀 | 『ひどいどしゃぶり』 | 心の花. |
10/27 | 文化勲章 | 久保田淳 | ― | 無所属. |
10/27 | 文化功労者 | ― | 歌壇より選出なし | ― |
10/27 | 第43回 現代短歌大賞 | 久保田淳 | 『藤原俊成 中世和歌の先導者』『「うたのことば」に耳をすます』並びに過去の全業績 | 無所属. |
10/30 | 第46回 現代歌人集会賞 | 笠木拓 | 『はるかカーテンコールまで』 | 遠泳. |
11/3 | 旭日小綬章 | 小池光 | 「芸術文化功労」により | 短歌人. |
11/19 | 第32回 歌壇賞 | 帷子つらね | 「ハイドランジア」30首(歌壇21年2月号) | 塔, 早稲田短歌会. |
11/24 | 第3回 笹井宏之賞 | 乾遥香 | 「夢のあとさき」50首(ねむらない樹 vol.6) | GEM, ぬばたま, 獏短歌会. |
12/21 | 第21回 現代短歌新人賞 | カン・ハンナ | 『まだまだです』 | 無所属. |
上半期(6月30日まで)の記
短歌界に限らず文化芸術の界隈では、三大新聞社が主催する文化賞の発表とともに年が始まるといっていもいいかもしれません。その中で「朝日賞」と「毎日芸術賞」からは今年は選出はありませんでした。そもそも歌壇からの選出が稀な賞であり、大きな賞ではありますがやや注目度は低い賞といえるでしょう。一方「読売文学賞」は詩歌部門が独立しているので、短歌関係者にもなじみが深く、今年は川野里子さんが受賞しています。
上半期でもっともインパクトが大きかった受賞は、吉川宏志さんの「芸術選奨文部科学大臣賞」と「斎藤茂吉短歌文学賞」の受賞でしょう。ダブル受賞というだけでなく、文化庁主催という非常に大きな賞「芸術選奨」が3年ぶりに歌人の歌集に与えられたことも短歌界として喜ばしいニュースでした。
他に大きなところでは「迢空賞」には三枝昴之さんに決まりました。今年の選考会は、新型コロナウイルス感染予防対策としてSkypeによるビデオ会議にて開催されました。同賞選考会では初の試みとして話題となりました。
受賞者の結社に注目してみると「心の花」に所属する歌人の活躍が目立ちました。
下半期の記
下半期は新人賞が次々と発表される時期にあたりますが、中でも印象的だったのは角川短歌賞でしょう。田中翠香さんと道券はなさんの「未来」会員による同時受賞は非常に驚かされました。
また今年は、新しい賞が二つ創設された年でした。第1回塚本邦雄賞は石川美南さんが受賞し喜びの雰囲気に包まれましたが、第1回BR賞は「該当なし」という結果に。来年は優れた作品が見いだされることを期待したいところです。
他には日本一行詩大賞新人賞に門脇篤史さんの『微風域』が選ばれ、日本歌人クラブ新人賞につづき二冠を達成しました。
秋の褒章では小池光さんが旭日小綬章を受賞し、短歌界全体にとって喜ばしいニュースがもたらされました。
結社としては「未来」の活躍が目立った印象でしょうか。