本記事は、短歌作品をネプリ(インターネットプリント)のサービスを利用して配信するための手順や確認事項をまとめたガイドラインです。
はじめに(サービス利用前に確認しておくべきこと)
短歌ネプリを作成し配信するために、先ず知っておくべきことと気を付けるべきことは次の2点です。
- インターネットプリントを提供しているサービス
- よくある失敗
この2点について以下に解説します。
インターネットプリントを提供しているサービス
- シャープ系:ネットワークプリント(ファミリーマート・ローソン・ポプラグループ・ミニストップ)
- 富士フィルム系:ネットプリント(セブンイレブン)
- リコー系:おきがるプリント(イオン・マックスバリュ・ダイソーなど)
- 京セラ系:Anytime Print(デイリーヤマザキ・セイコーマートなど)
なお各サービスの設置店舗数は、シャープ系は約30,000店、富士フィルム系は約20,000店、リコー系は約2,500店、京セラ系は約2,000店となっています。
なお各サービスの詳しい情報は、当サイト別記事「インターネットプリントサービスの4系列について考える」を参照ください。
よくある失敗
次のような失敗がよく見受けれらます。
- 印刷番号の転記ミス
番号を自分で打ち込んでいるためか間違っているケースが見られます。コピペを利用してミスなく転載しましょう。 - ファミマでしか印刷できない
「ローソン・ファミマ等で印刷できます」などと書かれているものの、ファミマでしか印刷できないケースが見られます。ファミマのネットワークプリント専用アプリ「ファミマネットワークプリント」を利用しているためと思われます。シャープが提供するのアプリ「ネットワークプリント」またはwebサイトから登録しましょう。 - 他ユーザーが印刷できるよう開放していない
シャープ系のサービス「ネットワークプリント」では、初期設定のままでは印刷番号だけで他のユーザーが印刷をすることはできない仕組みになっています。設定をさわり、「店舗にあるマルチコピー機でのログイン方法」を変更しましょう。 - モノクロ印刷を想定しているにもかかわらず、登録時にカラー印刷にしている
A3サイズだとモノクロ20円なのにカラーは100円、5倍も料金がかかってしまいます。登録時にしっかりとモノクロ設定をし、読者がスムーズに印刷できる状況を提供するよう心がけましょう。
以上全ての原因の多くは「試し刷りをしていない」ことに尽きると思われます。自ら印刷する読者の立場になり、問題なく印刷できることを確かめてから配信するべきでしょう。
より良いネプリを作るために
いざネプリを作り配信しようと思ったのであれば、これをより良く、そして間違いなく利用するため次の2点に留意しましょう。
- 原稿を作成するためのソフトウェア
- 原稿作成上の注意
- 登録する上での注意
この2点について以下に解説します。
原稿を作成するためのソフトウェア
原稿を作成するためのソフトとして、縦書きができることが重要になるでしょう。そしてまたPDFでの保存ができるということも大切です。そしてこれらが無料で出来るのであれば言うことはありません。
短歌ネプリ作成に適した無料ソフトまたはwebサービスと言えば、「Canva」「タテガク」「Inkscape」「TATEditor」「LibreOffice」などが優れた機能を提供してくれています。
またあなたが有料でも構わないというのであれば「Illustrator」「Word」「Powerpoint」などがあり、これらを使えば当然ながらより高品質な原稿を作成することができることとなるでしょう。
横書きでも構わないというのであれば「Googleドキュメント」や「Microsoft 365 Copilot (Word & Powerpoint」などの広く浸透したwebサービスで優れたデザインの原稿を完成させることも可能でしょう。
原稿作成上の注意
- ページ番号(ノンブル)を入れよう
複数ページにわたる連作のページ順は、作者本人ですらしばらく後には忘れてしまうかもしれません。 - 初版発行年月日を入れよう
その作品の初版発行年月日を入れておくことは、剽窃に対する有効な対応手段となりえます。 - 作者名・発行者名を入れよう
印刷された作品を、必ずしも作者が誰と分かった上での読者が読むとは限りません。 - 発行者のアクセス情報を入れよう(メールアドレス、SNSのアカウント名など)
あなたの作品に感動した読者は、あなたの長年の熱心な読者となるかもしれません。 - タイトルを付けよう
作品タイトルを付けることは、「作品としての価値を感じやすい」というだけではなく、「言及しやすい」、「シェアしやすい」という側面もあります。 - 余白をしっかりと確保しよう
マルチコピー機の多くは、上下左右各5mmのフチを印刷することはできません。また読者がファイルを保存するときパンチ穴を開ける可能性も考慮しましょう。上下左右どこを綴じてもいいように、少なくとも各2cmの余白を確保するといいでしょう。 - ファイル形式に注意しよう
ファイル形式について最良の選択をすることはコンピューティングに対する深い知識が必要ですが、基本はPDFを選ぶと間違いないでしょう。画像形式なら多くの場合PNGがベターと思われます。特に画像形式としてPNGを選ぶことは、文字メインの短歌ネプリであることを考えればJPGよりも良い判断となることがほとんどでしょう。なお、文書作成でよく利用されるword形式をそのまま登録すると、印刷時にレイアウトが崩れるケースがあるので避けた方が良いでしょう。 - デザインを確認するための試し刷りは複数店舗で
文字のサイズ、色の濃さ、バランス、読みやすさ、そういったデザインや印刷品質を確認するための初期のテストプリントにおいては、複数の店舗で印刷を試すべきです。これは異なるサービスでの差異を検証(例えばセブンとローソンで比較)するだけでなく、同じセブンでもA店とB店で印刷し比較をすべきという意味です。サービスが異なればマルチコピー機の機種が異なるので、印刷品質が異なるのは当然ですが、同じサービスで同じ機械であっても、用紙は同じものを使ってはいません。そのため印刷結果が異なる場合があります。特にあなたがあえて薄い色合い、低いコントラスト、細かい文字や模様を使うのであれば、同系列の複数店舗で印刷し、あらゆる印刷結果でも可読性が確保されることを確認するべきです。
登録をする上での注意
- 可能な限り4系統すべてのインターネットプリントサービスへ登録しよう
富士フィルム系を提供するセブンイレブンは約20,000店と1企業としての展開は最大ですが、サービスとしての規模はファミマ・ローソンで提供されるシャープ系が約30,000店と、より大きなものとなっています。居住地が大きく偏っているであろうあなたのファンにとって、どのサービスを選ぶことが真に効果的かを知ることは容易ではありません。基本的には4系統すべてのサービスへの登録を先ずは検討しましょう。ただし自ら(または協力者による)試し刷りができるサービスに限るべきです。 - アプリではなくPC(webページ)から登録しよう
webサイトから会員登録しての登録は、おおくのサービスで「間違いなく提携全店舗での印刷を可能」とし「印刷可能期間が長くなる」などのメリットが多い傾向にあります。
より広く確かに読者に届けるために
ファイルの登録が完了し、試し刷りに問題がなければ、この印刷番号を全国の読者に伝えなければなりません。
- 配信上の注意
- 宣伝のポイント
この2点について以下に解説します。
配信上の注意
- 印刷番号は手打ちを避け、コピー&ペーストで転記ミスのないように気を付けよう
コピペはあらゆるミスを減らしてくれるだけでなく、あらゆる作業を楽にしてくれます。 - 推奨印刷設定を明示しよう
カラー印刷かモノクロ印刷なのか。片面印刷か両面印刷なのか。小冊子印刷の設定をしてほしいのか。写真サイズならL版なのか2L版なのか。用紙は写真用紙かシール紙なのか。フチありなのかナシなのか。詳しく明示しましょう。ファンはあなたの理想とする印刷の形を類推する手段はもっていません。 - 完成形態を明示しよう
小冊子であればホチキス止めをしてほしいでしょうし、8P折本であればカットして折りたたんでほしいでしょう。 - 印刷費用を明示しよう
料金としての安さをアピールするというよりも、設定に間違いなく印刷できたというひとつの手がかりになるので、印刷費用を明示することは読者に大きな助けとなります。またそれは結果としての印刷枚数を示すことにもなります。 - 印刷期限を明示しよう
多くの読者は自らネプリを発行したことがありません。長くても1か月、サービスによっては1週間しか期限がないことを知らないことでしょう。もし印刷の期日が示されていれば、それが最終日であっても、いやだからこそあきらめずがんばって印刷してくれるかもしれません。 - 印刷番号を公開する前に、登録したすべてのサービスで試し印刷をしよう
また印刷番号を公開した後にも、まったくのいち読者、情報の受容者の立場になって、ただちに自ら印刷をしてみましょう。告知の記事や画像、ポストに書かれた情報に間違いはないか?どの番号を入力してもたしかに印刷されるか?そしてあらためて印刷物に誤字や脱字はなく、発色やコントラストに問題がないかを確認しましょう。
宣伝のポイント
- SNSのゴールデンタイムを知ろう
朝の通勤・通学時間、お昼休み時間、夕食後から就寝前のリラックスタイムがやはり利用者が多く、届きやすい時間と言えます。特に20時~22時あたりの時間は1日で最も読まれやすくシェアされやすい、ゴールデンタイムと言っていいでしょう。 - テキストだけでなく画像も使おう
文字だけの宣伝投稿より、画像を用いればやはり印象的です。動画も使えればよりアルゴリズムの評価も高くなりがちで、より拡散されやすくなることでしょう。また画像を使うのであればALT属性を与えることも忘れないようにしたいものです。視覚障がい者への配慮、というだけでなくこの世には様々な情報へのアクセス方法があることを考慮すべきです。 - SNSが有する細かい機能を活かそう
bio(自己紹介文)に宣伝ポストへのリンクを貼ることもできるでしょう。タイムラインに固定する機能もあります。あなたの宣伝投稿を一瞬で見失った人や、他の人によるあなたのネプリへの言及を見かけた人は、あなたの宣伝投稿ではなくあなたのアカウントに直接アクセスしてくるといったケースも考えるべきです。 - しつこく宣伝しよう
あなたのファンは毎日SNSを利用する人もいれば、月に数回程度の利用しかない人もいるでしょう。たった1回の宣伝では、その時間にもよっては誰一人の目にもふれないことがあるかもしれません。毎日、朝方の人に向けて、昼型の人に向けて、夜型の人に向けて、しつこく宣伝を続けるべきです。フォロワーが減ることを恐れる気持ちも分かりますが、愛すべきあなたの待ちに待った作品の宣伝が続くからと言ってフォローを外す人は、実はあなたのファンではないので気にする必要はありません。
さいごに(気になるところ諸々を)
- 用紙サイズのおすすめは?
A4サイズが支配的です。読者としてもA4より大きいサイズ(B4、A3)のものは、管理に困るところがあるでしょう。 - 文字サイズのおすすめは?
文字を小さく詰め込めば、自分の魅力をたくさん感じてもらえると思う気持ちも分かりますが、「読みにくい」という悪感情を抱かせては元も子もありません。文字サイズは10pt以上となるよう努力しましょう。それがたとえ魅力的なデザインを作るための工夫であっても8ptの大きさは確保するべきです。
(※古くからの印刷業界の慣例では10pt以上が基準ですが、多くのユニバーサルデザインガイドラインでは12pt以上を推奨しています。また最小サイズは慣例的に6ptを下限とするものですが、ネプリの印刷品質を思えば、多くのユニバーサルデザインガイドラインが定める下限の8ptが妥当と思われます。) - カラーとモノクロではどちらがおすすめ?
モノクロが支配的です。A3サイズで100円となるカラーは、たとえば10ページの小冊子(仕上りA4サイズ)を作成するとなると500円にもなってしまいます。この価格は歌集や同人誌を思えば安いかもしれませんが、ネプリとしての手軽さや印刷品質を思えば、あまり良いバランスとは言えないでしょう。どうしても表紙などでカラーが必要な場合は、別ファイルとして登録するとよいでしょう。 - どれくらい印刷してくれるかな?
オーガニックなフォロワー数の20分の1も印刷されれば、大成功と思っていいでしょう。その結果であれば、タイミングも良かったし宣伝の努力も十分やれた、ということになるでしょう。 - たくさんの人に印刷してほしい!
コラボも一つの手段です。また、恥ずかしがらず恐れず、ぜひ読んでほしいと思う人には直接連絡してみるという手もあるでしょう。常識的な態度であれば、それまで接点がなかった人であっても読んでくれるでしょうし、そのような申し出は、短歌が好きな人であればおそらく嬉しい出会いのはずです。(もちろん有名人に対して、その知名度を利用しようというような下心のもとの申し出は、簡単に見抜かれることでしょう。) - PDFも公開すべき?
4系統すべてのサービスを利用したとしても、居住地によっては印刷が難しい読者も想定されます。その解決のためにPDFを提供することは、とても優れた方法といえるでしょう。またITリテラシーや障害の有無など、アクセシビリティにもより配慮した手段ともいえます。しかしそのことで印刷件数は減るのは間違いないでしょう。多くの読者に紙での読書体験を提供したいという目論見は、PDFを提供しない場合よりも小規模になることは逃れられないと言えます。ネプリを発行する、この行為の主目的を何と定めるかによりPDFを公開すべきかどうかの可否は分かれます。そのあたりを踏まえた上で、PDFを配布するのであれば、その配布パターンはいくつか考えられるでしょう。 - PDFの公開のパターンは?
ネプリ配信だけでなくPDFも併せて公開するのであれば、次のようなパターンが考えられるでしょう。- ネプリ配信と同時に、noteなどでPDFを公開配布する。
- ネプリ配信期間終了後に、noteなどで公開配布する。
- BOOTHなどで、一定の手続きを経ることを条件として配布する。
- DMやメールなど直接申請を条件として配布する。
以上、あなたの短歌作品の魅力が余すことなく伝わるネプリが、配信される日を待っています。