
SNS、X(旧Twitter)における短歌系のアカウントのフォロワー数を調査比較し、その影響力を伺おうという試みです。フォロワー数の大きさのみに注目し順番に並べました。なおここで言う影響力は短歌になんらかのかかわりのある人々への影響力とします。
参考値として、各アカウントのフォロワー数からフォロー数を引いたものを差分として示しています。いわゆるフォロー返しを含まない人気を伺うひとつの手がかりになるかもしれません。(もちろんフォロー数が多いからと言って、そのフォロワー数がフォロー返しの結果で成立しているなどと断ずることはできません)
調査期間:2025年6月6日~8日
フォロワー数の多い短歌系アカウント
最適日常が把握する3,424件の短歌系のアカウントの中からフォロワー数の多い順に並べました。各アカウントの目的が見えやすいように、いくつかの分類に分けています。便宜的に「情報系(総合誌・詩歌専門出版・新聞)」、「短歌に強い総合出版系」、「公的団体系」、「結社などのグループ系」、「企画・コミュニティ系」、「個人系」の6つの群に分類し、それぞれのフォロワー数を比較しました。
情報系(総合誌・詩歌専門出版・新聞)
ここではいわゆる短歌総合誌、業界新聞誌、短歌や詩歌を専門とする出版社、そして新聞歌壇のアカウントを分類します。
ここにあるアカウントは、純粋に短歌の情報だけを流通させる機能を持つアカウントばかりになります。そのフォロワーはほぼすべてが短歌になんらかのかかわりを持つ人ばかりと考えられます。Xの短歌界隈に持つ影響力という意味では、その強さや大きさは、それぞれのフォロワー数そのままが示す通りになるだろうと言えるでしょう。一方でその影響力は極めて内向きともいえます。
(参考)短歌に強い総合出版系
ここでは詩歌に限らず様々なジャンルの書籍を出版する総合出版社を分類します。
総合出版社なので、短歌または詩歌の書籍だけを刊行しているわけではありませんが、他出版社とは比較にならないほど、短歌関係の出版に力を入れている出版社のアカウントです。イベントや歌集類の出版など、短歌に関する重要な情報をたびたび提供しますが、短歌だけの情報に限らないので、フォロワー数の大きさが即Xの短歌界隈への影響力の大きさを意味するわけではありません。
公的団体系
さまざまなグループの垣根を超えて結成されたパブリックな団体のアカウント群です。詩歌文学館は当然ながら短歌だけを扱いません。
事実上、短歌だけを扱うパブリックな団体は、歌人協会と歌人クラブの二つであり、そのフォロワー数はほぼ同じとなっています。両団体とも初心者に向けた活動にも積極的ですが、どうしても専門家のための団体という印象は否めません。これら団体のフォロワーの多くの部分は、そういったアカウントで構成されていると見なされるでしょう。すでに歌人としての地歩を固めた人々への強い影響力を持っていると言えます。
Rank | アカウント | フォロー | フォロワー | 差分 |
---|---|---|---|---|
1 | 日本現代詩歌文学館 | 450 | 3,364 | 2,914 |
2 | 現代歌人協会 | 4 | 1,388 | 1,384 |
– | 現代歌人協会(イベント用) | 3 | 639 | 636 |
3 | 日本歌人クラブ | 746 | 1,349 | 603 |
4 | 現代歌人集会 | 63 | 357 | 294 |
結社などのグループ系
いわゆる従来的な結社や同人グループについて分類します。
結社のアカウントについては、会員数の大きな結社だけがその運用を行えているというのが現状のようです。それぞれの会の大きさを反映したようなフォロワー数ですが、その影響力は、ほぼそれぞれの会員に対してのみに限られてしまいがち、とも言えるかもしれません。
Rank | アカウント | フォロー | フォロワー | 差分 |
---|---|---|---|---|
1 | 心の花 | 295 | 1,924 | 1,629 |
2 | 塔短歌会 | 239 | 1,662 | 1,423 |
3 | かばんの会 | 436 | 863 | 427 |
4 | 短歌人会 | 109 | 660 | 551 |
5 | 未来短歌会(非公式) | 61 | 343 | 282 |
企画・コミュニティ系
特に会員としての責任ある所属を問うことのない、自由に参加できる企画やコミュニティのアカウント群です。
1位の「ひとひら言葉帳」は、短歌だけではない詩歌や短文を紹介するアカウントなので、その影響力は外形の数字と比べて限定的といえるでしょう。とはいえ桁違いのフォロワー数の中には、多くの歌人が含まれていることは間違いありません。
短歌だけに限ったアカウントでは、実質的には「次世代文学」がもっとも影響力を持っているかもしれません。このアカウントも短詩短文学全般を扱うアカウントですが、今年に行われた「次世代短歌」からのコンセプト変更からはまだ日は浅く、そのフォロワーのほとんどは短歌関係のアカウントと見ることができるでしょう。
古くから活動を続ける「うたらば」は、他の古いアカウントとのつながりも多く、また毛色の違った影響力を持っていることでしょう。その歴史は古く2010年から運用されています。
※ toron*、千原こはぎ、のの、のアカウントは、それぞれ個人のアカウントではありますが、各々が主催する企画において重要な役割を担っているのでここに含めています。
Rank | アカウント | フォロー | フォロワー | 差分 |
---|---|---|---|---|
1 | ひとひら言葉帳 | 4,538 | 212,135 | 207,597 |
2 | 次世代文学 | 3,355 | 7,491 | 4,136 |
3 | うたらば | 808 | 6,980 | 6,172 |
4 | 短歌アプリ『57577』 | 371 | 5,409 | 5,038 |
5 | toron*(恋愛短歌同好会) | 869 | 5,196 | 4327 |
6 | 胎動短歌会 | 7,141 | 4,461 | △2,680 |
7 | 千原こはぎ(うたそら等) | 2,242 | 3,678 | 1,436 |
8 | たんたか短歌 | 1,269 | 2,498 | 1,229 |
9 | アプリ「コトアム」 | 55 | 2,374 | 2,319 |
10 | のの(うたの日) | 2,533 | 2,362 | △171 |
11 | アイドル歌会 | 52 | 2,295 | 2,243 |
12 | 今年の短歌 | 1,047 | 1,852 | 805 |
13 | 恋愛短歌同好会 | 889 | 1,111 | 222 |
14 | うたたね|短歌投稿サイト | 477 | 582 | 105 |
15 | 芸人短歌 | 464 | 581 | 117 |
16 | はたらきアリ出版 | 60 | 369 | 309 |
17 | tankalife | 388 | 347 | -41 |
(参考)個人系
短歌作品を創作している個人のアカウントを分類します。フォロワーが1万人以上のアカウントに限ってリストとしました。
なお必ずしも歌人としての活動がメインのアカウントばかりではないことに注意が必要です。例えば青松輝は歌人としても著名ですが、アカウントの名義的に、その多くのフォロワーはYouTuberベテランちのファンがかなりの割合を占めることでしょう。志賀玲太も一般には「QuizKnock」のメンバーとして知られていることでしょう。他の個人もそれぞれに様々な活動を行っていることがあり、必ずしも歌人としての評価でフォロワー数が決まっているわけではないことは言うまでもありません。
また一方で、Xのアカウントを持ちながらこのリストには含まれない著名歌人も多く含まれます。例えば現代短歌において極めて大きな知名度と影響力のある穂村弘などは、Xにおけるマーケティングを重視していないのか「穂村弘情報」というアカウントのフォロワー数は1万に届きません。(フォロー:0、フォロワー:9,365)こういった実態とかけ離れた数字の結果は、短歌創作だけでなく、Xアカウントの運用にどれだけ取り組んでいるかの差であるともいえるはずです。
このように個人の魅力を提供することでフォロワーを獲得する個人系アカウントは、その運用の仕方で大きく数を変動させるものですし、またそのフォロワーたちがフォローした理由も様々です。そのためその影響力はかなり測りにくい上に、その作家とファンの間での影響にとどまる極めて限定的なものにもなりがちです。また一方で短歌ではない魅力にひかれたフォロワーたちをかなりの割合含むということは、短歌界隈の外に短歌を広める可能性を持つアカウント群でもあるとも言えるでしょう。
Rank | アカウント | フォロー | フォロワー | 差分 |
---|---|---|---|---|
1 | 俵万智 | 495 | 306,484 | 305,989 |
2 | 青松輝(ベテランち) | 5,298 | 148,818 | 143,520 |
3 | 志賀玲太 | 1,233 | 60,476 | 59,243 |
4 | 木下龍也 | 879 | 42,460 | 41,581 |
5 | 岡本真帆 | 1,898 | 38,241 | 36,343 |
6 | 枡野浩一 | 5,868 | 25,232 | 19,364 |
7 | 上坂あゆ美 | 611 | 25,076 | 24,465 |
8 | 岡野大嗣 | 1,427 | 23,861 | 22,434 |
9 | くどうれいん | 0 | 23,395 | 23,395 |
10 | 谷川電話 | 241 | 21,990 | 21,749 |
11 | 宇野なずき | 121 | 18,988 | 18,867 |
12 | 鳥居 | 4,439 | 16,429 | 11,990 |
13 | 東直子 | 2,892 | 15,331 | 12,439 |
14 | 千種創一 | 90 | 15,303 | 15,213 |
15 | 加藤千恵 | 378 | 15,116 | 14,738 |
16 | 深水英一郎 | 6,936 | 13,582 | 6,646 |
17 | たろりずむ | 1,707 | 12,230 | 10,523 |
18 | 鈴木ジェロニモ | 1,299 | 11,562 | 10,263 |
19 | 伊藤 紺 | 850 | 11,472 | 10,622 |
20 | 水町春 | 98 | 10,611 | 10,513 |
21 | 西崎憲(フラワーしげる) | 6,489 | 10,529 | 4,040 |
22 | 小坂井大輔 | 1,255 | 10,109 | 8,854 |
合計
ここではそのフォロワーが短歌関係者だけに限定されるようなジャンルのアカウントだけを合同し比較してみます。すなわち総合出版系やコンセプトの見えにくい個人系のアカウントは等しく除外しています。
(※ toron*、千原こはぎのアカウントは、企画主催の役割もあるものの本来的には個人アカウントということでここでは除外します。またひとひら言葉帳、詩歌文学館のアカウントも短歌に限った影響力だけを伺う、という目的には合致しないので、除外します。)
次世代文学は、そのフォロワーのほととんどはまだ次世代短歌時代に構成されたものと見做し、現時点ではもっともフォロワー数の多い短歌関係アカウントであると考えて良いでしょう。
短歌研究は、主催または強く関与する企画のアカウントとして別に「アイドル歌会」と「ホスト万葉集」などの数字も持っているに等しく、ここで示した数字以上の影響力を持っているとも考えられます。
Xにおける短歌の世界、その動向をうかがい知る上で、これらのアカウントをフォローすることは必須といえるかもしれません。
あなたがより良い情報を得、より良い形でXの短歌界隈と接続できることを願っています。