
最適日常は、法と倫理のもとに、運営者、協力者、関係者、取引相手、会員、一般利用者などの関係する人々すべてが、尊重された形で安心・安全に最適日常の活動に携われることを目的として、「反差別・アンチハラスメントポリシー」(以下、本ポリシー)を策定しました。
はじめに
最適日常では、短歌にかかわるすべての人が、より良い文化的な活動を行い、より良い体験を得られるべく様々な活動を行っています。その活動は時に最適日常との一対一な関係であったり、時に最適日常が主催する集団的な関係であったりします。
そもそも最適日常は個人の活動です。そのなかのひと(以下、本運営)は無名の歌人であり、なんらの権力も影響力もないと自認しています。しかしながら、企画の主催者として他者と関係を持つと、そこにわずかながらでも権力勾配が発生することもあるはずです。また、ネット空間においてはそのフォロワーの多寡、そしてアカウントが個人然としてふるまうか組織然としてふるまうかによっても帯びる権威性に違いが生じるものと考えます。もちろん、そういった権力や権威性が無いとしても、その無力な立場からでもハラスメントの可能性を考えることは重要であると理解しています。
本ポリシーでは、特に最適日常の運営者が関係者に対して行う活動において、差別やハラスメントが生じることがないよう強い制約を課すものであり、また万が一差別やハラスメントが生じた場合は、その被害者の尊厳の回復に努め、再発防止を講じるための措置を取るための方法を定めるものです。
また関係者の立場においても、どのような属性、立場、マイノリティーに属しているとしても、被害者になり得ることはもちろん加害者にもなり得ることを意識し、自らを尊重し守るためと同時に他者を尊重し守るために、本ポリシーの内容をよく理解いただき協力を願いたいと思います。
約束
- 最適日常の活動を行うその運営主体は、本ポリシーを常に遵守します。またサービスの成長および時代や環境の変化に合わせ、これを適切に更新していくことに努めます。
- 最適日常の活動に協力する関係者に本ポリシーを随時提示し、理解し遵守してもらうことに努めます。
- 最適日常の経済的な取引相手に本ポリシーを随時提示し、理解と協力をもらえることに努めます。
- 最適日常とその関係者において差別やハラスメントの問題が発生した場合、ただちに被害者の尊厳の回復に努めるとともに、再発防止に取り組みます。
差別やハラスメントの定義
そもそも人は生まれながらに人以外の何者でもなく、また人以外の何者になるものでもありません。人権が発見されて以来、すべての人はただ人であるからこそ誰もが誰からも尊重されるべき存在として、今日までその理解を広めてきました。また人は様々な形でこの社会に接続し、互いに補完し合い社会の利益を生み出すのであって、その利は合理的に等しく分配されるべきものであるはずです。
最適日常では、かような理念に適合しない差別やハラスメントを次のように定義します。
差別とは
最適日常の活動を行う上で要求される能力とは関係の無い「個人的な特性」を理由に排除されたり、異なる待遇を受ける状況を差別と考えます。
ハラスメントとは
差別を土壌とし、その差別が存在することを背景に、取引における支配的な地位や立場を利用することで、または環境を支配し得る力や行動によって、被害者が正常な活動を行えなくする行為をハラスメントであると考えます。
またこのハラスメントには次の2つの類型が存在します。
a. 対価型ハラスメント
被害者にとっての「利益」や「不利益」を生める立場にある者が、契約上の本来的な成果とは関係の無い理由で、その取引における支配的な地位や立場を利用し、他者が本来望むはずの無い行動を強いる行為。
b. 環境型ハラスメント
周囲の他の関係者や同席者から見て、現代的な社会通念において合理的な判断を行える者が、苦痛を感じ正常な判断を行えなくするような行為。
差別やハラスメントに利用される特性について
差別やハラスメントに利用される特性としては、次のようなものが挙げられます。
- 性に関わるもの:性的特徴、ジェンダー、性自認、ジェンダー表現、性的指向など
- 出生に関わるもの:人種、色素・肌の色、民族など
- 出身に関わるもの:出身地、国籍、言語、方言など
- 身体に関わるもの:身体的特徴、年齢、障がい、病気など
- 文化に関わるもの:職業、学歴、婚姻、思想、信条、宗教など
列挙したこれらは、差別やハラスメントの理由になりやすいことは既知の通りであり、それゆえに常態的に注意すべきものです。他方、これらとは別の差別やハラスメントに利用される特性が存在しないわけではありません。それらはまだ発見されていない、一般的ではないというだけであり、そのため常に未知のハラスメントに苦しむ人々の声を探す努力を怠ることがないよう意識すべきと考えます。
差別・ハラスメントに類する具体例
ここでは特に短歌の世界で起こり得る差別やハラスメントの具体例を列挙します。
差別の具体例
- 会員比率や受賞比率などから見ても不当にある特性(男性)ばかりが選者になっている。
- 雑誌等において、ある特性(若者)だけを特別なものとして扱ったり、ある特性(女性)を劣るかのように特集を組む。(ただし対する別な特性についても特集を組んだり、それが差別への抵抗を支援する意味での特集であれば別。)
ハラスメントの具体例
- 歌会などで、ハラスメントに利用される「個人の特性」を、文芸批評上の妥当性なく否定し、許可なく詮索し、吹聴し、流布するような行為。
- 大声や激しい動作などの威圧的な言動や、権力の誇示、またはこれを暗に示しすことで、他者の発言を遮ったり、主張を変えさせたりするなどの行為。
- 作品批評の場において作品の瑕疵を、人格に転嫁してその尊厳を傷つけるような言動を発する行為。
- 会に出席するたびに定めた人の容姿を褒め、連絡先を求めたりするなど、しつこく交際を迫る行為。
- 会合における茶や菓子などの準備は、女性が行うものといった態度やふるまい。
- 出席者の許可なく、または望まない形での撮影や録画、録音、及びそれらのSNSでの拡散行為。
- 二次会などにおける、アルコールや苦手な食品の強制、お酌の強制。
そもそも歌会やシンポジウム、批評会など、すべての集会はそのタイトルが示す機能のみを持つものであり、出会いを求める場でも自己の権力を誇示する場でもないので、そういったタイトルに合致しない行動は完全に排除しなければなりません。
また、ストーキングや、強迫、暴行などの行為は、ハラスメントの範疇ではなく、犯罪行為としてただちに通報を行うものとします。
ハラスメントを防ぐために
どのような関係においてもハラスメントを行わないことに注意し、もし仮にこれを犯した場合速やかに改善することは当然のことですが、組織のようにふるまいながらその実個人である本運営は、本質的に多様な視点を持てないがために、その自浄作用にはおのずと限界があるはずです。そのため最適日常では、差別やハラスメントを未然に防ぐため、関係者に対し差別やハラスメントに抵抗する力そして抑止する力を提供すべきと考えます。
抵抗と抑止:本ポリシーの実効性の保証
本ポリシーの実効性を保証し、差別やハラスメントの被害を受けうる関係者に抵抗力、抑止力をするために以下の行為を認めます。
すべての関係者が、最適日常との契約や企画を進める上で生じたやり取り、そのすべて(SNSのDM、メール、LINE、手紙、文書などあらゆるテキスト、および音声通話、zoomなどのビデオ通話等)について、記録および複製し、かつこれを必要に応じて(差別やハラスメントの懸念が生じた場合に限らず)いつでも許可なく公開することを認めます。この条項は、企画上やマーケティング上の理由で守秘を願った情報であっても優先され適用されます。ただし、本運営個人のプライバシーに関わる情報については、慎重な判断をお願いします。
(補足:誰もが少しの躊躇もなくハラスメントに対抗する行動をとっていただけるように、情報を公開することにいっさいの理由は求めません。最適日常の活動が常に緊張感をもって行われるために、ぜひ記録と情報を有効に活用ください。)
なお、グループ会議などの記録に含まれる、最適日常の運営主体とは異なる個人・団体の発言、映像および情報については、当然ながらその公開の権利を有しません。これが含まれる場合は、その部分を適切に秘匿し公開してください。また、もしその部分の公開も必要な場合には、個々の許可や法令に基づいた正当な理由がある上で行ってください。
最適日常とのやり取りを公開する上での注意
- 一部の切り抜きや編集・要約したものではなく、完全にそのままの形で複製を公開してください。また可能な限り前後の文脈が分かる十分な量の記録を公開してください。
もしも差別やハラスメントの被害を受けたら
本運営とのやり取りで、あるいは関係者間において差別やハラスメントの被害が発生したら、次のような対応をします。
最適日常によるハラスメントが発生した場合
本運営による差別やハラスメントの被害が発生した場合は、
- 問題の特定および原因の究明
- 要因の応急的な排除
- 発言の撤回や問題の削除・公開停止
- 経緯の説明と謝罪(被害者が望めば公開の形で)
- 再発防止策の検討
- 以降も問題が生じうる活動の停止
などを適切に速やかに行うものとします。
しかしながら、これらの行動は個人の自己反省に基づく、本質的に不公正さを完全に排除し得ない対応に過ぎません。そのため将来的には「ハラスメント委員会」を外注設置し、この判断を仰ぐような機能的なフローを実現すべきと考えています。
関係者同士によるハラスメントが発生した場合
被害者からの相談を受けて、またはなんらかの発信を見つけた場合、加害者への聴き取りの上、被害の大きさと今後の修正可能性を判断し、以下の4つのいずれかの対応を行います。
- Lv.1 「告知」:その行為が差別やハラスメントに類する旨を告知し、改善を促す。
- Lv.2 「警告」と「分離」:その行為が差別やハラスメントに当たることを伝え、今後の改善がなければ退場等の処分を取らざるを得ない旨を伝え、改善を促す。また被害者と加害者を分離させることが可能な場合はこれを行う。
- Lv.3 「処分通達」:集会からの退場を通達。システムとして可能な場合は直ちに退会させる。
- Lv.4 「法的措置」:処分通達を行った上で、被害者が自ら法的措置を検討する場合はこれに協力し、被害の状況によっては本運営の独断による通報等を行う。
また、いずれの対応の後においても、以降に提供する集団の場における再発防止に取り組みます。
将来的な制度の拡充
本ポリシーの有効性を拡充するため、将来的に次のような対策を期限を設けず検討します。
- 特に本運営による被害相談を受け付けるための「外部団体による相談窓口」の協力の提携
- 特に本運営による被害相談を受け付けるための、外部委員としての「個人による相談担当」の設置
- 相談や、訴えの妥当性や被害の重さの判定を請け負うための、外部委員としての「ハラスメント会議」の設置
相談窓口
最適日常の運営主体は個人であるため、多くの組織が対策として設ける「相談窓口」のようなものが実質機能しないため設置しておりません。相談や被害の訴えを送る先として本運営が相応しくないと思う場合は、次のような公的な相談窓口の利用を推奨します。
- (文化庁)【文化芸術分野】文化芸術活動に関する法律相談窓口
- 法テラス
- フリーランス・トラブル110番
- みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)
- 女性の人権ホットライン
- 性犯罪被害相談電話全国共通番号
もしも加害者となったら
差別やハラスメントの加害者であると指摘されることは極めて心外であり、容易には受け入れがたいことだと思います。そのため、事実を認められなかったり、言動をごまかしたり、被害者の別な問題を探したり、人格を攻撃したりするに至りがちです。
しかしながら、差別やハラスメントは誰もが不完全な人である限り必ず犯しうるものであるし、それはただこれまで気づかなかったり指摘されてこなかっただけで、実は多くの加害を行ってきたはずです。差別やハラスメントを許し難いと心から思う人が、そのような履歴を歩むことはなんら矛盾するものではありません。
そのため加害を指摘されたら、有り得る当然のこととして、素直に受け入れることを、本ポリシーの理解者のひとりとして意識しましょう。
先ずは被害者の苦痛をおもんばかり、そしてその勇気や、自分がこれ以上に重い加害を加える可能性を止めてくれたことに感謝し、本ポリシーが求める措置を速やかに実行してください。
被害者への責任を果たしたら、その種の会合への出席を一定期間休んだり、自分自身を見つめ直し考えを更新する機会を設けることもできるでしょう。ストレスがなければ間違いを犯さなかったかもしれません。そして改めて書籍から学んだり、セミナーに参加するなどを検討するのも良い方法だと考えます。
本ポリシーの適用範囲
関係者には本ポリシーの発行日より適用されます。本運営には、その活動の開始日たる2020年5月まで遡及的に適用されます。
さらに学ぶために
- 歌会におけるハラスメント防止、そして「それ以外」の防止について|中本速
- プロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」
- 短歌研究 2023年4月号(拡大特集「短歌の場でのハラスメントを考える」)
参考:他団体におけるハラスメントポリシー
改訂履歴
- 1.0:新規制定